何がこわいといって、子供を生むぐらいこわいことないんです 藤圭子

1971年9月発行の週刊平凡で、藤圭子が木元教子のインタビューに答えています。藤圭子は同年8月2日に前川清と長崎県佐世保市で挙式を挙げたばかりです。記事のタイトルは『赤ちゃん生むのがこわいんです』。子供のことについて話した部分を引用します。

木元 ところで、お子さまは…?

藤  そのことですけれどねぇ、(笑)できればの話ですけど…。

木元 でも、できるんじゃない、そのうちに…。

藤  そうでしょうか。(笑)自分では子供ができないんじゃないかと思っているんですけどね。

木元 どうして?

藤  どうしてって、私はふつうの人みたいに体格よくないしね。それに子供なんかできるとこわいですね。おなかがおおきくなるんでしょう?(笑)いろんな人に痛くないかって聞くんですけど。ほんとにふしぎですね、あれは。(笑)


妊娠には喜びとともに不安もつきものですが、不安の中でも出産時の痛みに関してが多いといいます。藤圭子が陣痛を怖がっていますが、まだ妊娠していないうちからかなりの怖がりようです。

 

井上和博氏はフリーの写真家で、2002年に『時代を喰った顔』という写真集を出しています。その中に藤圭子と竹村健一の対談の場面があります。時期は1978年2月。記事のタイトルは『26歳バツイチ藤圭子、出産を語る』です。抜粋して引用します。


寂しく沈鬱そうな外見とは裏腹に、明るくはきはきした受け答えだった。彼女自身「あわてんぼで、ちょっとでも暇があれば、じっとしていられない」と自分の性格を語っている。プライベートでは、ロックを聴いたり騒いだりするのが好きなのだそうだ。

「もう一度、結婚しようという気はありますか?」という竹村の質問に、「さあ…いまのところ、する気ありません」と答えた。竹村はさらに「では、いま理想の男性があらわれて、結婚してくれいうたら、どうする?」とつっこんだ。それに対して藤は、

「あたし、子供生むのがこわいから…。何がこわいといって、子供を生むぐらいこわいことないんです」

と言い切った。

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またここでも出産を怖がっています。何よりも子供を生むことが怖いと言っています。ここまで極端に出産を怖がる人はそうはいないでしょう。当時の藤圭子には子供を生んで母になる、というイメージはありませんでしたが、実際においても子供を生むことに対する恐怖心に圧倒されている様子が見て取れます。母になるというよりは、その逆に守ってあげたいと思わせるイメージです。

この5年後に、米国で照實氏との間に宇多田ヒカルが生まれます。出産予定日はクリスマスでしたが、予定日になっても陣痛が起こらず、いつまでたっても陣痛が起きないので陣痛促進剤を何度も打たれますが、それでも陣痛が起きませんでした。結局、出産予定日から4週間近く経った1月19日に帝王切開でヒカルを産みました。

出産予定日を過ぎて日が経つと、胎児が羊水の中で排便するようになり、それが胎児の呼吸器に入り、出産したときに呼吸障害で死亡するリスクが高くなります。ヒカルも取り上げられたときは呼吸をしておらず、照實氏が必死に介抱してようやく産声をあげたといいます。帝王切開は時期的に死産になるかどうかのギリギリのときに行われたことがわかります。

藤圭子が陣痛促進剤を打っても陣痛が起きなかったのは、出産に強い恐怖心を持っていたことが大きな要因として考えられます。それには藤圭子が典型的な機能不全家庭で育った幼少時の体験が影響しているようです。