単調さを避けて歌いまわしを変えた「女のブルース」の歌唱

「女のブルース」は、石坂まさを作詞の歌詞が4行詞の形式で、起・承・転・結の形になっています。作曲の猪俣公章は、起・承にあたる1フレーズ目と2フレーズ目でメロディを変えていますが、音の長さはどちらも 短・長の繰り返しで同じです。

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1フレーズ目の楽譜上の歌いまわし(節回し)は次のようになります。

 ♪ お んー な でー す もー の こー い おー す るー

これを藤圭子は次のように歌いまわしを変えて歌っています。

 ♪ お ん なー で す も のー こー い お す るー

楽譜通りの歌いまわしでは、リズミカルな感じで少し軽い歌謡曲っぽくなります。それに対して、藤圭子の歌いまわしではリズミカルな感じはまったくなくなり、重い感じ、思いつめた感じになります。

2フレーズ目の楽譜はメロディーは1フレーズ目とは異なっていますが、歌いまわし(節回し)は同じで変わりがありません。2フレーズ目の歌いまわしを次に示します。

 ♪ お んー な でー す もー の ゆー め にー よ うー

メロディーで音程が変わっているとはいえ、楽譜上の歌いまわしが変わっていませんから、楽譜通りに歌うと1フレーズ目と2フレーズ目では同じように聞こえ、単調に感じられる恐れがあります。

この2フレーズ目を藤圭子は次のように1フレーズ目とは異なる歌いまわしで歌っています。

 ♪ お ん なー で す も のー ゆ めー に よ うー

この独特の歌いまわしの使い分けは2番、3番、4番でも同じように行われています。


藤圭子 「女のブルース」

坂本冬美は猪俣公章の内弟子時代に、楽譜が読めないので教えてもらえないかと頼んだところ、猪俣公章は、演歌歌手に譜面は必要ない、譜面どおりに歌ったら面白い歌が歌える訳がない、と言われたといいます。

猪俣公章は「女のブルース」で、1フレーズ目と2フレーズ目を同じ歌いまわしで作曲しましたが、藤圭子がうまい具合に歌いまわしを変えて歌うだろうと期待していたのかもしれません。

藤圭子独特の歌いまわし(節回し)は、猪俣公章が期待していた通りの出来だったのでしょう。