「唐獅子牡丹」「聞いてください私の人生」「刃傷松の廊下」でのノイズを混ぜた歌唱

藤圭子は歌手の中でも歌唱で様々なテクニックを使う歌手だったといえるでしょう。藤圭子の歌唱テクニックの中には、歌声に意図的に「ノイズ」を混ぜて歌うものもありました。

ここでいう「ノイズ」というのは、長く伸ばす音で、母音に本来の音色以外に「ノイズのような濁った音」を混ぜるというものです。例えば「ウー」と母音を伸ばす箇所で、母音に「ヴー」というような濁った音を混ぜる発声を行うのです。

レコードで、ノイズを混ぜた歌唱が確認できるのは「唐獅子牡丹」と「刃傷松の廊下」の2つです。

最初に1973年6月のアルバム「演歌の旅 緋牡丹博徒」から「唐獅子牡丹」です。


藤圭子♥唐獅子牡丹

この唐獅子牡丹では、3番の最後の ”からじしぼーたーんー” の ”んー” で、藤圭子の ”ヴー” というノイズのような音が混ざっています。これは大音量で聴いた場合に初めて聞き取れるような微妙なものです。ヘッドホンで大きな音で聞くとより分かりやすいでしょう。

これは藤圭子のハスキーな声質から自然に出たもので、意図的に藤圭子が出しているのではないと思われるかもしれませんが、藤圭子が喉の結節の手術をして ”声がきれいになった” 後の1976年11月のステージでの「聞いてください私の人生」でも同じくノイズを混ぜる歌唱をしていることから、そういった見方は当てはまりません。


藤圭子 トップスターショー 新宿の女・聞いてください私の人生・涙の酒

このステージでの「聞いてください私の人生」ではかなりはっきりとノイズを混ぜて歌っていることが分かります。この曲に関しては、1976年のデビュー7周年記念リサイタルでも歌っていますが、そこでも ”ヴー” というノイズのような音を混ぜて歌っていることがよく分かります。

1978年12月のアルバム「歌謡劇場」の「刃傷松の廊下」でも同じことがいえます。


藤圭子 刃傷松の廊下

ここでも3番の最後の ”こーのーむーねーんー” の ”んー” で、”ヴー” というノイズのような音が混ざっています。これはヘッドホンで大音量で聴かないと分からないぐらい微妙なものです。

こうした「ノイズのような濁った音」を混ぜたのは、聴くに人に藤圭子の歌唱から、力強さや激情さ、決意の強さなど、よりドラマチックに感じさようとしたためだと思います。

試しに私がこの ”ヴー” というノイズのような発声をしてみようとしたところ、意外と簡単に発声できてしまいました。

藤圭子は様々な曲で様々な歌唱テクニックを用いていますが、意図的にノイズを混ぜるといった常識破りの歌唱テクニックは、藤圭子だけが用いたテクニックだと思います。