藤圭子の暗黒エネルギー

このブログの最終的な目的は、藤圭子がなぜあのような悲劇的な最後を遂げなければならなかったのか。その理由を解明することです。

畳み掛けるように "しゃくり" が連続する「京都から博多まで」

歌唱テクニックの一つに "しゃくり" があります。カラオケの採点機能の対象となっているので知っている人も多いと思います。

念のために説明すると しゃくりとは、1音の発声において本来の音程より低く発声し始めて本来の音程まで引き上げる歌唱テクニックです。小節の出だしの音や音程が前の音よりも高くなる音で、かつ長い音に使われます。

しゃくりには、上げきるまでにかかる時間の長短、音程を区切って上げるかなめらかに上げるか、出だしの音程をどの程度下げるかなどのバリエーションがあります。音程を区切って上げると、しゃくりなのか楽譜に書かれているのか判別できません。

しゃくりを効果的に用いることで豊かな情感や一本調子ではない変化を表現することができます。

藤圭子は「京都から博多まで」で しゃくりを多用しています。愛する人を追っていくというイメージをしゃくりで表現しようとしたものと思われます。

ここで「京都から博多まで」の動画を提示したいのですが、レコード音源の歌唱にはアップロード規制がかかっていて提示できません。それ以外のステージ動画ではどれもかなり崩した歌い方になっていて、しゃくりもはっきりしません。藤圭子も他の大多数の歌手と同様にステージでの歌唱はレコード録音時の歌唱よりも "雑な歌唱" になってしまっているものが多いのです。唯一例外があるとすれば、それは1970年の渋谷公会堂ライブでの歌唱です。

レコード音源では1番よりも2番3番の歌唱でしゃくりの回数が多くかつはっきりとしています。

2番の歌詞を次に示します。この歌詞で赤字の部分をしゃくりで歌っています。

 にどもさんどもー こいしたあげくー
 やはりあなたとー こころにきめたー
 きーしゃがゆーくゆく せとうーちぞいにー
 しーずむきーもちーを ふーすーててー
 きょーかーらー はーかたまーでー
 あーなーたをおーってー
 こーいーをーたずーねてー ゆくーおーんなー

これ以外にしゃくりを多用している曲としては、1974年のカバー曲である中条きよしの「うそ」があります。中条きよしは、うそ の歌唱で しゃくりを全く使っていません。

藤圭子はこの曲を男歌のように歌っています。中条きよしが女歌として繊細に歌っているのとは対象的です。藤圭子の歌唱は手加減なしのストレートで力強ささえ感じさせます。

うそ の歌詞は、自分を裏切った男性への思いを綴っていますが、そこには男性を恨む心情はありません。ですが藤圭子がこの歌詞で しゃくりを使ったのは、裏切った男性を "追及" しようとする強い女性を表現したかったからなのでしょう。 


藤圭子♥うそ

藤圭子は赤字の部分をしゃくりで歌っています。

 おれたたーばこの すいがーらでー
 あなたのーうそが わかるーのよー
 だれかいーひとーできたのねー
 できーたーのーねー
 あーはんとしあまりのこーいなのにー
 あーエプロンすがたがよーくにあうー
 つーめーもそめずにいてくれとー
 おんながあとからなけるよなー
 かーなしーいー うーそーの
 つーけるーひーとー

この歌唱で しゃくり のように聞こえる部分で しゃくり としていない箇所があるのは、その音程を上げている部分で楽譜に音符が表記されているからです。

藤圭子がカバーした うそ の歌唱が、中条きよしの歌唱よりも上手く聴こえるのには、このしゃくり の使用も寄与しています。